空間参照と座標系は、GISを扱う上で重要なポイントです。
ダウンロードしたデータをGIS上に追加したが、マップに反映されない(表示されない)時は、まずは座標系が一致しているかどうかを確認しましょう。
本ページでは、GISで空間データを表現・分析するための「空間参照」と「座標系」を紹介します。また本ページで用いる画像は、ArcGIS Pro上の画面を示しています。
空間参照とは
空間参照とは、空間情報を地球上の位置と結びつけることです。
空間参照は、「直接参照」「間接参照」の2つに分けられます。
直接参照は、座標を用いて地球上の位置を直接的に参照します。
座標・・・位置を表すための数値の組で、緯度経度座標や平面直角座標(X,Y)などがあります。
例:東京駅の緯度経度 ▶︎▶︎▶︎ 緯度 24.2867 経度 153.9807
間接参照は、地理識別子(住所, 郵便番号, 地番等)を用いて地球上の位置を間接的に参照します。
例:東京駅の住所 ▶︎▶︎▶︎ 東京都千代田区丸の内1丁目
座標系とは
座標系とは、座標を用いて空間情報を地球上の位置と関連付けるための取り決めのことです。
座標系は、「地理座標系」「投影座標系」の2つに分けられます。
地理座標系
地理座標系は、3次元である地球上の位置を緯度と経度で表した座標系です。
緯度経度は、地球の重心からの角度で表すため、座標値の単位は角度になります。
緯度・・・その地点における天頂の方向と赤道面とのなす角度です。
北極点の+90度から南極点の-90度までを範囲とします。
経度・・・イギリスの旧グリニッジ天文台跡を通る本初子午線(0度)として計測された角度です。
東方向の+180度から西方向の-180度までを範囲とします。
同じ緯度を結んだ横の線を緯線といい、同じ経度を結んだ縦の線を経線といいます。
緯度値と経度値は、10進表記の度単位、または度,分,秒(DMS)単位で計測します。
GISを扱う上で重要なポイントは、地理座標系は単位が角度であるため、距離や面積を正確に計測することができません。経線は赤道から離れるほど間隔が狭くなるため、同じ1度間隔でも距離が異なります。
日本/世界測地系 | 測地基準系 |
日本測地系 | 日本測地系 |
世界測地系 | 日本測地系2000(JGD 2000) |
世界測地系 | 日本測地系2011(JGD 2011) |
世界測地系 | WGS 1984(WGS 84) |
投影座標系
日本で使われている投影座標系は、平面直角座標系、UTM座標系、Webメルカトルがあります。
平面直角座標・・・ガウス・クリューゲルの等角投影法(正角図法)を用いた日本固有の投影座標系です。日本付近に19個の原点を置き、それぞれの原点からの距離をメートル単位で計測し、位置や形状を表現します。
主に、大縮尺の地図(詳細な地図)に採用されており、国土地理院発行の縮尺1:2500〜1:5000の国土基本図に使用されています。座標値は、原点から東および北方向が+(プラス)、西および南方向がー(マイナス)の値になります。
日本のどの場所がどの系に入るかは、下記表を参照ください。
例:東京駅千代田区 ▶︎▶︎▶︎ 平面直角座標系 第9系
ArcGIS Proでは、平面直角座標系は、
「投影座標系」→「各国の座標系」→「日本」フォルダーに格納されています。
同じ平面直角座標系◉系に対し、地理座標系が「JDG 2000」「JGD2011」「Tokyo」
の3種類あります。
UTM座標系・・・UTM図法(ユニバーサル横メルカトル図法)を使用して、地球全域を経度6度ごとに60のゾーン(経度帯)に分割して投影した投影座標系です。日本付近は51〜56帯に入ります。
主に、中縮尺の地図に採用されており、国土地理院発行の縮尺1:10000〜1:200000の地形図・地勢図に使用されています。
ArcGIS ProではUTM座標系は、
「投影座標系」→「UTM座標系」→「アジア」フォルダーに格納されています。
同じUTM座標系 第◉帯Nに対し、地理座標系が「JDG 2000」「JGD2011」「Tokyo」
の3種類あります。
Webメルカトル・・・Webメルカトルは、Webの地図で標準的に用いられている投影座標系です。GoogleMapで採用されていることでも知られています。ArcGIS Proでは、WGS 1984 Webメルカトル(球体補正)がデフォルトの座標系に設定されており、地球の形状を楕円体ではなく球体と定義して投影をします。球体の半径は、WGS 1984 楕円体の長半径の長さと同じです。
ArcGIS Proでは、WGS 1984 Webメルカトル(球体補正)は、
「投影座標系」→「世界範囲の座標系(WGS 1984)」フォルダーに格納されています。
ArcGIS Proでの座標系の扱いのポイント
ArcGIS Proで空間データを正しく表示・解析するには、データに正しい座標系が定義されている必要があります。データに座標系が定義されていない、あるいは正しい座標系が定義されていない場合、地図がマップ上の正しい位置に表示されず、誤った解釈や解析をしてしまう可能性があります。
座標系が定義されていないシェープファイルは、そのファイルを構成するファイル内に、「.prj」ファイルが存在しません。(「.prj」は座標系情報を格納するファイルを指します。)
データの座標系を確認する方法は、
「コンテンツウィンドウ」→「マップを選択して右クリック」→「プロパティ」から確認できます。
「解析タブ」→「ツール」→検索で「投影法の定義」を使用し、手動で座標系を定義します。
ここで重要なのが、正しい座標系で定義することです。
データの座標系は通常、データの説明(ダウンロードサイトや仕様書)に記載されています。
国交相が提供する国土数値情報 GISホームページ のデータをダウンロードします。
下記の画像がダウンロードするデータの詳細情報です。下にスクロールすると、地域ごとの各種データがあるので、そこから対象地域を選択し、ダウンロードします。(今回は過疎地域データを利用)
各種データは、座標系が指定されています。今回の場合は、「JDG2011」となっています。
GISでは、元の座標系を適切な座標系に定義することで、表示させることが可能です。
投影法の定義ツールから、座標を定義後、投影変換ツールを用いて変換しましょう!